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·#051
文書管理特集#7

文書管理は、捨てるためにある引継と廃棄が、本当の仕事だ

文書管理と聞くと、大切にためて取り出せるようにすること、と思うかもしれない。だが本当の目的は逆で、要らなくなった文書を、期日どおりに適切に捨てることにある。ためるのは簡単、正しく捨てるのは難しい。引継・廃棄という文書管理の本題。文書管理シリーズ第7回。

ためるのではなく、捨てるために

「文書管理」と聞くと、文書を大切にためて、いつでも取り出せるようにすること——そう思うかもしれない。だが、半分は逆だ。文書管理の本当の目的は、要らなくなった文書を、適切に捨てることにある。

考えてみれば当たり前だ。役所の文書は、放っておけば毎年ひたすら増える。ためる一方なら、棚も書庫もいずれ溢れ、どこに何があるか分からなくなる。それは「管理」ではなく、ただの「堆積」だ。管理とは、増やすことではなく、正しく減らすこと。文書管理は、捨てるためにこそ、ある。

すべての文書に、寿命がある

役所の文書には、保存年限が決まっている。1年、3年、5年、10年、永年——文書の種類ごとに、何年保存するかが規程で定められている。年限が来た文書は、原則として廃棄する。逆に言えば、文書管理の要は、寿命が来たものを、期日どおりにきちんと捨てられるかどうかにかかっている。

これまでに登録してきた簿冊が、ここで効いてくる。簿冊は、同じ分掌事務・同じ保存年限の文書をまとめた束だ。だから廃棄も、文書を一枚ずつではなく、簿冊まるごとの単位で判断できる。簿冊は、そもそも「まとめて捨てるため」に束ねられている。

簿冊管理のワークフロー。簿冊は年度中と年度終了後の1年間は事務所内に保管し、年度終了の2年後に1年保存の簿冊は廃棄、3年保存以上の簿冊は書庫へ引き継ぐ。そして保存年限が経過した文書は廃棄される

簿冊は「簿冊単位で廃棄するために」、分掌事務・保存年限ごとに管理される。年度中と翌1年は手元に、そのあとは保存年限に応じて、書庫へ引き継ぐか廃棄するか——簿冊の一生は、廃棄へ向かって進んでいく。

だが、「捨てる」は勝手にできない

ここが、役所ならではの難所だ。民間なら「もう要らない」で捨てられる書類も、役所では、誰かの一存で捨ててはいけない。うっかり捨てた文書が、後から必要になっても、もう取り返せない。だから廃棄は、必ず決裁と承認の手続きを踏む。

NGWは、この引継と廃棄を、厳密なワークフローにしている。簿冊を書庫へ引き継ぐのも、保存期間を延ばすのも、廃棄するのも——各課が決裁し、文書管理部門が承認する、という二段の手続きを通す。

処理流れ
引継目録書庫へ引き継ぐ簿冊を選び「保存文書引継目録」を出力。各課で決裁 → 文書管理部門へ引継申請
引継処理文書管理部門が引継先の書庫を設定し「保存文書引継指示書」を出力。各課は指示書を受けて簿冊を書庫へ移す
保存期間延長まだ捨てられない簿冊は「保存期間延長申請書」で延長。各課で決裁 → 文書管理部門が延長承認
廃棄処理「廃棄予定」で「廃棄簿冊確認目録」を出力。各課で決裁 → 文書管理部門が廃棄承認

どの処理も、形は同じだ。「各課の決裁 → 文書管理部門の承認」。捨てる判断を、現場と管理部門の両方の目で確かめる。しかも、いつ・どの簿冊を・誰が引き継ぎ/廃棄したかが、すべて記録に残る。「気づいたら消えていた」を、決して起こさないための設計である。

そして、期限が近づいた簿冊は、担当者が探しにいくまでもなく、システムのほうから一覧に上がってくる。

保存期間が3年以上で、まだ引き継がれていない簿冊の一覧。各簿冊に保存期間(3年保存・5年保存など)が付き、引継・保管の欄に「令和8年度 引継 → 令和10年度 廃棄」のように引継年度と廃棄年度が表示されている

「保存期間が3年以上で、まだ引き継がれていない簿冊」の一覧。各簿冊に保存期間があり、「令和8年度 引継 → 令和10年度 廃棄」と、いつ書庫へ引き継ぎ、いつ廃棄するかが決まっている。期限の来た簿冊を、システムが自動で拾い上げてくる。

ときに、文書は「資料」に変わる

ただし、すべてが廃棄へ向かうわけではない。まれに、寿命を超えて残されるものがある。

歴史的に大きな出来事や事業——大きな災害、市町村合併、時代の節目となる事業——にまつわる文書は、後世に伝えるべき歴史資料としての価値を帯びることがある。そうした文書は、保存年限が来ても捨てず、資料として残す。行き先も変わる。役所の書庫ではなく、博物館や図書館へ移管し、公文書としてではなく、地域の記録として長く守っていく。文書のライフサイクルの、いちばん先にある特別な出口だ。

そして——どの文書を後世へ残すべきか。その判断は、人間の仕事である。 保存年限のように、規程で機械的に決められるものではない。何がこの時代の記録として意味を持つのかを見極めるのは、いつの世も、人の目と手に委ねられている。システムは、その判断を助けることはできても、代わることはできない。

所在管理と、適切な廃棄

プレゼン資料に、こう記した一行がある。「文書管理の基本は、正確な所在管理と適切な廃棄です」。この二つは、表と裏だ。今どこに何があるかを正確に押さえているからこそ、期日が来たものを、確信を持って捨てられる。所在が曖昧なままでは、怖くて何も捨てられず、結局ためこむしかなくなる。

第1回から積み上げてきた、分掌事務・簿冊・棚・書庫の仕組みは、すべて、この「適切な廃棄」に至るための助走だった、とも言える。捨てるために、所在を正確に押さえる。順序は、そういうことなのだ。

AIとの協働作業での学び

「ためる」仕組みを作るのは、簡単だ。保存領域を増やし、検索を付ければいい。難しいのは、「正しく捨てる」仕組みのほうだ。いつ、何を、誰の承認で捨てるか。捨てた記録を、どう残すか。取り返しのつかなさと、どう向き合うか。

文書管理の本当の仕事は、増やすことではなく、適切に減らすことにある。捨てるために、ためる場所を整える。捨てるために、所在を正確に押さえる。——文書管理は、廃棄するためにこそ、あるのだ。

(文書管理シリーズ第7回。第1回分掌事務で管理する、第4回今ある棚と簿冊を登録するだけ。)