全ての文書は、分掌事務で管理する業務は、分掌事務でしかない
役所の文書を「課・係」で管理すると、組織改編のたびに壊れる。NGWは文書を、条例で定義された分掌事務に紐づけて管理する。業務の実体は分掌事務でしかなく、組織はそれを盛る器にすぎない。文書管理シリーズの第1回。
組織で管理すると、組織改編で壊れる
役所の文書管理を作るとき、最初に決めなければならないのは「文書を、何に紐づけて管理するか」だ。素直に考えれば、「課・係」で管理したくなる。総務課の文書、企画課の文書、と。人は組織で仕事をしているように見えるからだ。
だが、それをやると必ず壊れる瞬間が来る。組織改編である。役所では、課が統合され、係が分かれ、名前が変わることが、当たり前に起きる。組織を軸に文書を縛っていると、改編のたびに過去の文書の所属が宙に浮く。「この文書は、無くなった課のものだが、いま誰が引き継いでいるのか」——その問いに、システムが答えられなくなる。
国の指針は、文書分類で管理する
では、何を軸にすればいいのか。国が示す文書管理の指針では、文書を文書分類——大分類・中分類・小分類——の三段で体系立てて管理する。内容によって整理するやり方で、これはこれで筋が通っている。実際、工夫すれば文書分類だけでも、管理はなんとか回る。
ただ、文書分類が答えるのは「どんな内容の文書か」であって、「今それは誰の所管か」ではない。組織改編で担当が移っても、文書分類は変わらない——変わらないがゆえに、所管の移動には無関心だ。結局、課・係で縛ったときと同じ壁に、もう一度突き当たる。
業務は、分掌事務でしかない
そこでNGWが目をつけたのが、分掌事務だ。役所には、文書分類とは別に、分掌事務という「もうひとつの物差し」が、条例で最初から用意されている。せっかくそれがあるのに、使わない手はない。
分掌事務とは、条例(事務分掌規則)で各部署に割り当てられた「担当する事務」のこと。「◯◯に関すること」という形で、法令・条例に根拠を持って定義されている。ここに、この設計の芯がある。
役所の業務の実体は、突き詰めれば分掌事務でしかない。 「企画課」という組織が業務を持っているのではない。「◯◯に関すること」という分掌事務がまずあり、それをたまたま今は企画課が担っている——順序はこちらだ。組織は、分掌事務を盛る器にすぎない。器は改編で変わっても、事務そのものは残り、別の器へ引き継がれていく。
だから文書を分掌事務に紐づけておけば、組織がどう改編されても、その事務を引き継いだ先で文書を追える。組織変更に柔軟に対応できる——これが「分掌事務で管理する」の効きどころだ。
たとえば、企画課の文書で考えてみる。文書分類だけで捉えると「企画(大分類)/企画(中分類)/企画一般(小分類)」——これでは範囲が大きすぎて、企画課の雑多な文書がひとまとめになってしまう。ところが分掌事務なら「まちづくり事業に関すること」と、ぐっと絞り込める。分掌事務のほうが、文書の粒度に近いのだ。
しかも、だ。仮にまちづくりを専門に担う「まちづくり課」が新設されても、「まちづくり事業に関すること」という分掌事務そのものは変わらない。事務が動いていないのだから、企画課がそれまで持っていた文書は、そっくりそのまま、まちづくり課へ引き継げる。組織が割れても、事務を目印にたどれば、文書は迷子にならない。
これは絵空事ではない。NGWの分掌事務の管理画面には、まさにこの移り変わりが記録されている。

分掌事務を軸に据えると、文書は生まれてから廃棄されるまで、ひとつの流れの上に乗る。

ふたつの軸 — 分掌事務と、文書分類
国の指針が示す文書分類に、分掌事務を重ねる。NGWは文書を、このふたつの軸で捉える。
- 分掌事務 … 誰の(どの事務の)文書か。文書管理の所管を決める、縦の背骨。条例に由来するから安定していて、組織改編に強い。
- 文書分類 … どんな内容の文書か。大分類・中分類・小分類の三段で、中身によって整理する。
収受・起案・会議録として生まれた文書は、このふたつの軸で位置づけられ、簿冊にまとめられ、棚・キャビネットに並び、やがて書庫へ引き継がれ、保存年限が来れば廃棄される。分掌事務は、この文書の一生(ライフサイクル)のあいだ、ずっと管理の主体を指し示し続ける。
実装でも、それは徹底されている。簿冊には、ひとつの分掌事務のIDを設定し、簿冊目録・背表紙・引継目録といった帳票には、必ず「分掌事務」の列が並ぶ。文書の居場所を最終的に保証しているのは、組織名ではなく、条例に根ざした分掌事務のほうなのだ。
269人の異動を、まるごと受け止めた
これは、机上の理屈ではない。実際に南九州市では、令和8年(2026年)に大きな組織改編があった。3月31日付で25部門を廃止し、翌4月1日付で20部門を新設する統廃合である。これに伴う人事異動は、会計年度任用職員を含めて269人にのぼった。
一夜にして組織図が塗り替わる、この規模の改編。それでも文書は、分掌事務を軸に引き継がれ、ひとつも迷子にならなかった。NGWは、この大異動に柔軟に、かつ的確に対応した。組織が根こそぎ動いても、文書の所在は保たれる——「分掌事務で管理する」という最初の選択が、まさにこの瞬間に報われた。
AIとの協働作業での学び
「何に紐づけて管理するか」は、最初のたったひとつの選択でありながら、システムの寿命を決めてしまう。移ろいやすいもの(組織)に紐づければ、変化のたびに壊れる。変わりにくいもの(条例に根ざした分掌事務)に紐づければ、変化を吸収できる。
組織改編が宿命の役所という場所で、文書管理が10年動き続けるために、NGWは「業務は分掌事務でしかない」という一点から、すべてを組み立てた。土台に何を選ぶか——地味な最初の一手が、その後のすべてを決める。これは、NGWとは何かを貫く思想でもある。
(この記事は、NGWの文書管理を掘り下げるシリーズの第1回です。)